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【篠田節子】「長女たち」【ネタばればれ】

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長女たち (新潮文庫)

篠田 節子/新潮社




せんだってから、糖尿病、怖い糖尿病と書き連ねたのは、篠田節子の「長女たち」が原因です。文庫本になって本屋に並んでいたので、手に取ってぱらぱらめくり、購入しました。3部仕立てになっていて、最初が「家守娘」次が「ミッション」最後が「ファーストレディ」です。

で、糖尿病云々が出てくるのは、最後の「ファーストレディ」です。




3作共それぞれに重いテーマがあり、意味もそれぞれ違いますが、登場するのが「長女」というのが共通です。題名にもなっています。最後の「ファーストレディ」に出てくる長女はお医者さんのお嬢さんで、色々あった末に家に戻り糖尿病の母親の介護をしつつ、家業の主婦?代理もこなしています。え~と、ファーストレディ役です(ムズカシイ)

お母さんは病気のせいもありますが、実に我儘で、娘の言うことなすことすべて無視。糖尿病用の日々の食事を丹念に作って用意をしても一切食べません。まずいから。そりゃそうでしょう。塩分控えめ糖分控えめだから一般食に比べると薄味で美味しくないかもしれない。
でも、折角作ってくれるのにな~~贅沢だな~と私は思ってしまいます。

病人食は一切食べないのに、食べると身体に悪い甘いものは、隠れて過食するから、どんどん病が悪くなります。糖尿病は自覚症状がないから、倒れた時には既に遅し状態。腎臓がすっかりダメになっていて、治療としては透析、透析は辛いので、もしできれば腎臓移植をすれば楽になる。が、そうそう簡単にはできません。で、生体腎移植を考える。整形外科の医師であるお父さんは勿論生体腎移植は大反対ですが、主人公は母親にそっともちかけてみました。

すると、お母さん大乗り気じゃありませんか!!
で、「私の腎臓が合わなくて弟(同じく医師)のが合うとなったらどうするの?」
と、聞くと、弟は大事な跡取りだからとんでもない。

と、いう訳です。本心丸出しというのか、長女の気持ちなんてこれっぽっちも考えない、はっきり言って毒親なわけ。

読んでいるこちらもぞぉ~~っと背筋にきましたね。

「結婚したくなかったけれど、あなたがお腹にいたからしょうがなかった」
「背中におんぶして電車に飛び込もうかと思ったこともある」

そういう言葉が蘇り、長女はどこかへ行こうと決心して終わります。

お母さんも長女も怖いわよね~
他人事なので怖いわよね~で済みますが、自分の身にふりかかってきたらどうしましょう?
河野太郎は父親に肝臓を1つあげちゃったけれど、なかなか真似はできません。

う~~~む、、、
あげる母親はもういないので、貰わなくても済むように、気をつけなくちゃと思った単純な私でした。ホント単純、、(´・ω・`)

「家守娘」やもりではなくいえもりと読むのでしょうか?お母さんが大切にしている古くて広い建物と庭があるおうちに住みながら、認知症それもかなり難しいレビー小体型認知症をわずらう母親の面倒をみています。妹がいるけれど、妹は妹でジブンチの世話で手一杯。あれこれとお姉さんに口出しはするけれど、それだけで役には立ちません。

厄介なのは、お母さんが一切他人を家にいれたがらないことです。
だからヘルバーさんも使えないし、デイサービスやショートも利用できません。
一人で重荷を背負ってあ~しんど、、、

で。ちょいとオカルトチックな場面も出て来たりしていて、篠田節子面目躍如です。
で、このタイプの他人をいやがる認知症のお母さんというのが、次に読んだ「銀婚式」にも出てくるので、おそらく著者の身近にいるのだろうと思ったら、案の定、篠田節子さんのお母さんがそうらしい。
全部娘に世話をさせて、ボケた頭で厄介ごとを引き起こすわけですが、あ~だこ~だ云うだけで感謝することもなく、ホント大変だなとため息ばかり出てきました。

結局この長女さんの場合は、広い自宅を利用して、土地を貸して家そのものを老人ホームにしてしまうという、目から鱗がポン!の解決策で終わります。こんな都合の良いことは普通ないのでしょうが、普通の現実的終わり方(母親が亡くなるのをじっとただひたすら待つor心中するetc.)ですと、夢も希望もなくなるから、これはこれで非現実だろうと何だろうと、先が感じられて良い結末だと思いました。

2番目の「ミッション」というのは、どこか寒い国。チベット辺りのイメージでしょうか?その地へ僻地医療に携わっていた主人公が出向き、医師として働くのですが、そこは高地ですから元々野菜などはあまり収穫できません。ヤクの乳で作ったバターなどを多食。塩漬けの肉などを多食ということで、塩分過多が原因の若年ぽっくり病で、土地の人は比較的若くしてポックリ逝ってしまうのです。病に苦しむことなく、ぴんぴんころり であります。

食事が原因のぽっくり病なので、塩分控えめの食事を工夫して勧めますが、そうなると、ぽっくりいかなくなるのよね。病に伏して辛い思いをすることになる。

で、

人間にとって良いことは、病んでも長生きすることなのか、若くてもぽっくり苦しまずに逝くことなのかという重いテーマが出てきます。

今の時代のように90歳100歳が当たり前になると、長生きってなんだろう?
健康で最後まで過ごせるのは有難いことですが、何十年も患って、本人も周りも苦しむのはどうなんだろう?ぽっくり逝ける方が幸せなんだろうか?と、単純に悩むわけです。

はぁ~~~

ただ生きるだけで、もうため息が出るほど大変だものね。
もうこれでいいわ。と、思ったらぽっくり逝けるといいですね。

色々なことを真面目に考えさせてくれる3部作でした。
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by genova1991 | 2018-02-20 18:35 | 読み物 | Trackback | Comments(0)

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