【壁抜け男】
2006年 10月 15日
原作はマルセル・エイメの「壁抜け男」
音楽はミシェル・ルグランです。
「壁抜け男」は私が高校生の時に何故か題名に惹かれて翻訳を買い、長い間本棚に並んでいました。(現在行方不明)翻訳が中村真一郎で、私にとっての中村真一郎はこの本の訳者でした。その後1回驚くべきシチュエーションで顔を見る機会があり、その方がこの人だと知ってから、私の中では「壁抜け男」の名前が強烈な印象として残っていましたが、勿論ストーリーは忘れ果てておりました。早川書房のこの翻訳本は劇場でも販売していました。
「あら、まだ出版されているのだわ」
「そうか。中村真一郎は四季の文芸部にいたから身内だしね」と、納得。
ひょんなことから「シェルブールの雨傘」や「ロシュフォールの恋人」で有名なミシェル・ルグランがミュージカルにしたと知り、懐かしくなって見ることにしたのです。
「壁抜け男」がミュージカルになるような作品だとは思いもよりませんでした。
マルセル・エイメもフランスではとても有名な作家だとは知りませんでした。
ミュージカルというとブロードウェー。
どうもフランスとミュージカルは結びつきません。
というわけで、ブロードウェー流の歌ったり踊ったりではなくて、ミシェル・ルグラン流の音楽劇でした。だから自由劇場でも上演できるはずなのです。あの舞台でドッタンバッタン ダンスをされた日にはぶつかりそうですもん!
何の先入観も持たずに見たのですが、舞台が1947年のパリ・モンマルトルということで、戦争の影が残っているせいか、そういうイメージなのか「暗い」の。
狭い舞台の上に3階建ての建物がそびえていると、圧迫感があり、余計に暗く重く感じてしまいました。歌もずぅ~~~っと短調なので、尚更「暗い」
「シェルブールの雨傘」のカトリーヌ・ドヌーブは可愛くて綺麗で華やかだったから、どうもミシェル・ルグランと聞くと華やかな感じを持ってしまうのです。
そこが誤算。
フランス語で歌えばもう少し軽やかに感じたのかな?とも思いますが、しょうがないわね。日本語って重いのだというのがわかりました。
プログラムを見ると男性陣は芸大や国立音大を出たような声楽のプロばかりなので驚きました。さすがに皆さん良い声で美しく響きわたり、大満足です。
四季もミュージカルでは結構長い歴史があるので、歌える俳優さんには事欠かないのでしょうね。大きな劇場のミュージカルも見たくなりました。
この劇で印象深いのは伴奏がピアノとパーカッションとリードの3人だけで済んでいるということです。だから小さな劇場でも上演出来るのだと納得が出来ました。ミュージカルだから演奏も生に決まっているのでしょうが、目の前でピアノを弾いているのはとても新鮮に感じました。
距離的にもまさに目の前のピアノでした。
やはり音楽はライブが一番ですよね~。
ストーリーは題名通りに突然壁を通り抜けられるようになった男の物語です。ドラエモンの世界のようですが、至極真面目です。
平凡で真面目な寂しい男性が突如壁抜け人間になると、どうなるか?
あなたが壁を抜けられる能力があると知ったらどうするか?
最初は驚いてドクターに診察を仰ぎますが、アル中のドクターはびっくりもしないのが可笑しかったです。そして「壁抜けに疲れたら飲みなさい」と薬をもらいます。この薬がくせ者でした。
そのうちにパン屋に忍び込んだり、宝石を盗んで貧しい人にプレゼントしてみたり、いやな上司を脅かしたりするようになります。
アパルトマンの2階に軟禁状態の人妻に恋をし、色々、色々あって、最後には壁を抜けられなくなって埋まってしまうという落ちとなります。
そもそも「壁抜け」には何かのテーマがあるのでしょうか?
ふってわいたように身に付いた能力の生かし方?
凡人がスーパーマンに変身?
突き破ろうとした閉塞感なのに、固まってしまう不幸?
マルセル・エイメは他の作品も読んだと思いますが、全然記憶になくて、どんな人だったのだろう?と改めて考えてしまいました。
モンマルトルに行くとジャン・マレーが作った「壁抜け男」があるそうです。
見に行きたいな~それ!と思った土曜日の午後でした。
ミュージカル自体の出来はこじんまりとよくまとまっていて、良く仕上がっていたと思います。
装置のせいで重苦しいのかな~としつこく考える私でした。ちなみに演出や装置などはフランスでの上演をそのまま持ってきたようでした。それはちょっと凄いじゃないか~とも思いました^^。
>六本木 ですか~?俳優座劇場しか行ったことがありません。まだあるのかしら?@俳優座
四季の俳優さんは劇団の中だけで食べていけるから、テレビなどには出てこないので名前を聞いてもピンときません。大勢のメンバーの中の上澄みのほんの一握りの才能だけが舞台にあがれるのでしょうか?大きな劇場の方ではおおがかりなミュージカルをやっているから、そちらに出演しているのでしょうね。この音楽劇は一人で何役もこなすからあまり人数はいませんでしたよ。
そういえば彼の代表作は小説「四季」ですね。
昔本を買いましたが買ったきり読んでいません。
>文芸部 大昔ね~。私がよく見ていた頃のパンフには名前がのっていましたよ。浅利さんたちはフランス劇が好きだから、フランスつながりかもしれません。
>「四季」 言われてみればありましたね。私も買って読み始めてそのままのような気がしてきました。五木寛之の方は女性誌の連載で読んだのですが、、、夏子とかね☆(違ったかな?)奈津子かな?
たまにミュージカルも楽しいですよ~
もう少しお安いともっと行けるのでしょうが、ね~~^^;